まえがき

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この物語は、とある女性と一匹のひつじが主人公です。

物語は、故郷の森を元気にしたいと願う動物たちが「森の元気には『エコ』がいいらしい」と仲間同士で語り合うところから始まります。しかし『エコ』は人間界の最近の流行。動物たちには何が『エコ』なのか見当もつかず、詳しいことは人間に聞くしかありません。そこで、一匹のひつじが森を後にし、人間の住む街へと出かけます。

人間の街でひつじが出会ったのは、お花屋さんで働く女性でした。ひつじはさっそく 「『エコ』を教えてほしい」と女性に伝えますが、彼女は日常生活でそれほど『エコ』を実践しているわけではない、普通の女性です。しかし、熱心なひつじの訴えに折れ、戸惑いながらも自分の部屋で『エコ』を教えてあげることにします。

人間の街で嬉々として目標を達成していくひつじ、そして、何の気なしに『エコ』活動を手伝う女性。応援してあげているつもりの女性でしたが、やがて、ひつじとの交流のなかから日々を幸せにするきっかけになりそうな「大事なこと」に気が付くのでした……。

女性が気づいた「大事なこと」はとりたてて目新しいものではありません。しかし、忙しい日常のなかでついつい忘れがちなことです。

今回は、さまざまな形で伝えられているこの「大事なこと」を『エコ』をモチーフに物語にしてみました。

では、物語をお楽しみください。

旅立ち

とあるところに、変な口癖の動物達が住む、どこか懐かしい森がありました。ところが最近、その森の木々のようすが少し変です。どうも全体的に元気がありません。ひつじは、去年の今ごろは咲いていた赤い花が見つからないことを、少し残念に感じていました。

動物たちはみんなで「なんでだろう? どうしたらいいだろう?」と話し合っていました。

みんなが思い思いの意見を一通り出し合いましたが、答えは出ません。

「確か……『エコ』でよくなるって聞いたことがあるモカ」

ふと思いついたひつじが、モコモコの毛をうれしそうにふくらませて言いました。

「そうブガか!? で、『エコ』って何ブガ? 秘密の合言葉ブガか?」

初めて聞く『エコ』という言葉に、ライオンは興味津々。大きな口をモグモグさせながらひつじを見つめます。

「えっと、実は詳しく知らないモカ……」

しょんぼりとするひつじの横で、パンダがまん丸の目をくるりと回して言いました。

「そんなときは、長老に聞けばいいマナ♪」

それを聞いた仲間はうれしくなりました。

おとうさんのおじいさんの、そのまたおじいさんの生まれるず~っと前から、この静かな森で生きている森の大木は、頼りがいのある長老です。物知りの彼ならなんでも知っているはず。

集まっていたひつじとライオン、パンダにペンギン、そしてゾウは、いっせいに長老の住む森の奥へと歩き出しました。

モコモコ、モグモグ、ペッタン、ズッドン、くるりんくるりんと――

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「おぉ、どうしたんじゃ?みんなそろってからに」

早足で歩いてくるみんなを出迎えた長老は、不思議そうに聞きまし

た。白くて長いツタのひげを、くるくるくるくると四方八方に巻き上げながら、ひとりひとりの顔をのぞき込みます。

「最近、森が元気ないけど、長老は気づいているモカか?」

ひつじが、ドキドキしながら聞きました。

「う~む。そうか。お前たちは気づいておったか」

みんなの気持ちを落ち着かせようと、長老は静かな声で続けます。

「じゃがの、鳥や風たちに聞くと、どうやら『森だけ』のことではないようじゃのう」

それを聞いたペンギンが、くちばしをきゅっと持ち上げて言いました。

「そういえば、前に住んでた海も少し元気がなかった気がするプキ」

「この前、川で水浴びしたときちょっと変な感じがしたズド」

ゾウが足を踏み鳴らして応えます。

「そうじゃ。みんなの住んでおる場所全体が、少し元気を失っているようじゃのう」

不安そうな表情になったみんなを励まそうと、ひつじが元気な声で聞きました。

「それで、こういう時は『エコ』がいいって本当モカか?」

「おぉ、それをどこで聞いたんじゃ? お前はなかなか物知りじゃな。確かにそれがよいと、ワシも聞いておる」

ひげを大きくひと巻きすると、長老は頼もしそうに目を細めました。

「へへ。やっぱりそうなんだモカ。じゃぁ、どうすれば『エコ』できるモカか?」

「まぁ、そうあせるな。『エコ』というのは、最近の人間界で流行っていることのようじゃから、ワシも詳しいことはわからんのじゃ……。だから、そうじゃのう……ならば人間のところに行って、教えてもらうというのがいいかもしれん」

「えっ、人間? 人間は怖いブガ」

目を丸くしたライオンがすかさず言いました。他の動物も同じ意見のようです。

ひつじも考えました。

「人間モカかぁ。怖いモカね……でも、行かないと森はこのまま……赤いお花も見つからないモカ」

少しの沈黙の後、ひつじは長老の方をしっかり向いて耳をピンと立てました。

「うん、わかったモカ。行ってみるモカ」

ひつじの体中の毛が、緊張のあまりモキュッと引き締まっているようすを見て、周りのみんなは心配そうに顔を見合わせました。一方長老は、枝についた葉という葉をさわさわさわさわと、感動でゆらしています。

「そうか。お前はみかけによらず勇気があるのう。 行ってくれるのか」

「モカ! だって、人間は最近『エコ』を始めたモカよね? だったら、人間も森を元気にさせたいってことだと思うモカ」

(あっ、そうか…)他の動物たちの表情が少し変わりました。

「うむ。よく気がついた。ワシもそう思うのじゃ。きっと人間とはいいパートナーになれるじゃろう」

「パートナー……」

ひつじの毛が、希望ですこうしだけ膨らみました。

長老は自慢のひげを背中にあるくぼみの中にひょいと差し入れました。くぼみの中で休んでいた鳥が「チチッ」と鳴き、飛び立ちました。

「おお、これは失礼。すまんかったのう」

長老は鳥に謝ると、何かを大事そうに取り出しました。

「では、このボトルを持っていきなさい。『エコ』で『森のしずく』がたまるという『夢のボトル』じゃ。ずいぶん前に、あの鳥たちがくれたのだ。こういうときのために、とっておいてよかった」

ボトルを受け取ったひつじは、しばらく好奇心に満ちたまなざしで見つめ「モカ。しずくがたまったら戻ってくるモカ」と言いました。

「『森のしずく』はきっと、森の木を育てる栄養になる。そうじゃ、見事に育てあげたら、『ごほうび』をやろう」

「本当モカか? やった♪ がんばるモカ!」

「え!? ご、ごほうび! ほ、欲しいプキ」

モッコモコに毛を膨らませて喜ぶひつじを見て、他のみんなもちょっとうらやましそう。

「そうじゃ、そうじゃ。ほれ、『夢のボトル』はまだあるぞ。みんなはどうするんじゃ?」

長老は、いたずらっぽくひげを巻きました。

「森に戻ってきたら、『エコ』のことや人間のことを話そうモカ」

「ブガ。そうしようブガ」

『ごほうび』の効果か、ライオンもその気になってきたみたいです。

「よし、行ってみるモカ」

旅立つ『モカ』が口癖のひつじの名は「ウェア」。

ウェアはモコモコと毛をゆらして、人間の住む街へと軽い足取りで歩き始めました。

出会い

ウェアは人間の住む街までやってきました。

「『エコ』はどこモカかな」

「人間の街には土が無いモカね」

「ここには木や花は育つモカか?」

森との違いに不安になり、だんだん寂しくなり始めたウェアはひとりごとばかり。

「この曲がり角の向こうもどうせ同じモカ……」

でも、コンクリートの角を曲がった先に見えたのは、赤や黄色、白や紫と、色とりどりの花が咲く建物でした。

「あっ! お花がいっぱいあるモカ! 赤いお花もあるモカ!」

「ここでもちゃんとお花が咲くモカね♪」

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ウェアは小さな尻尾をくりんくりんと振りながら花に近づきました。花の間に鼻を埋めたウェアは、「あれ? でも、この赤いお花は土とつながってないモカ……」と、びっくりして小さく鳴きました。

その声を聞いて奥から人間が出てきました。

「うん? あなた……どうしたの? こんなところで」

あっ、人間……。ウェアは心臓の動きが速くなるのを感じました。

(大丈夫、大丈夫……。赤いお花も一応あったモカ。人間も『エコ』だモカ)

ぎゅっと『夢のボトル』を握りしめました。

「お花が欲しいの?」

「お花? お花はまだ森にいっぱいあるモカ」

「そう。それはいいわね。『モカ』って口癖?」

「モカ。森の仲間はみんな口癖があるモカ。ひつじの中でも『モコ』『モナ』っていう子もいるモカ」

仲間のことを口にしたウェアは少し呼吸がゆっくりになってきました。

「へぇ、そうなの。なんだか楽しそうね。それで、なぜあなたは森から出てきたの?」

「えっと、『エコ』を探しにやってきたんだモカ」

「『エコ』?」

「モカ。『エコ』で森が元気になるモカ。長老が人間に教えてもらえって」

「そうかぁ。でも、『エコ』って言われてもなぁ」

「えっ? 人間でも『エコ』がわからないモカか?」

「う~ん、そうねぇ。わからないというか、何を『エコ』と言うかってちょっと難しいのよ。人によっても違うだろうし」

「???」

ウェアはよく分からず、首をかしげました。

「あら、そんな顔しないでよ。私の場合は……そうねぇ、電気をマメに消したり、ゴミをちゃんと分けたりとか、そんなことかなぁ」

「そうなの? それが『エコ』モカか? やっぱり人間は知ってるモカね!」

ほっぺたをピンク色に膨らませて、ウェアは大喜びです。

「あら、あんまり期待されても困るけど、まぁ、多分ね」

「ねぇねぇ、じゃぁ、『エコ』させて欲しいモカ」

「えっ? 『エコ』をさせて欲しいって言われても……」

「どうしても『エコ』したいモカ。森を元気にしたいモカ」

「もう、そんなかわいい目で見つめないでよ。う~ん、じゃぁ、私のおうちに来てみる?」

「モカ! 『エコ』とか人間の世界のこと教えて欲しいモカ!」

「そう。勉強熱心なのね。では、今日からよろしくね。モコモコのパートナーさん」

「パートナー? そうか! パートナーだモカ!」

長老に言われた言葉を思い出し、ウェアの瞳が輝きました。どうやらこの人間はいいひとみたい。ウェアの胸が高鳴ります。

「ところで、あなたお名前はあるの?」

「ウェアだモカ」

「ウェア? ふ~ん、聞きなれない名前ね。でも、ステキよ」

「うれしいモカ。じゃぁ、お姉さんのことはなんて呼べばいいモカか?」

「そうねぇ、お花屋さんの『はなちゃん』でどうかしら」

「わかったモカ。はなちゃんと呼ぶモカ」

こうして、森から出てきたウェアは「はなちゃん」と名乗る女の人と出会いました。

初めての『エコ』

パチッ。はなちゃんが部屋の電気をつけました。

「ここがはなちゃんのお部屋モカか?」

「そうよ。ちょっと狭いけど、なかなか片付いてるでしょ?」

「はなちゃんのお部屋しか知らないからわからないモカ」

「それはそうね」

はなちゃんはそう言うと、ソファーに腰をおろしました。ウェアもつられてソファーに腰掛けます。いつものようにテレビのリモコンを手に取り、はなちゃんはボタンを押しました。

「あれ? テレビがつかない。電池切れかしら?」

リモコンから電池を取り出し、電池を両手で暖めてからもう一度入れました。そして再びボタンを押しましたがテレビはつきません。

(何をしてるモカ???)

「あっ、そうだ」

はなちゃんはちょっと大きめの声を出しました。

「???」

ウェアは、はなちゃんの顔を見上げました。

「昨日の夜、テレビで『エコライフは主電源から』なんてやってたから、柄にもなく電源抜いたんだっけ」

はなちゃんは手を頭にのせて苦笑い。

でも、ウェアには別のことが大事だったようです。

「エコライフ? エコライフって『エコ』モカか?」

「あぁ、そうだったわね。ウェアは『エコ』をしに来たんだったわね」

「モカ。『エコ』をすると、このボトルに『森のしずく』がたまるモカ」

と言って、長老にもらったボトルを誇らしげにかかげました。

「へぇ、とても透き通ったボトルね。いいもの持っているわね。それで、そう、エコライフの『エコ』は、あなたが探している『エコ』だと思うわ」

「やった!『エコ』をひとつ見つけたモカ!」

ボトルを小さくふりふりすると、ウェアは熱心にはなちゃんの顔を見つめます。

「よかったわね。私は便利な方がいいからあまり主電源は切らないし、ときどきテレビもつけっぱなしなんだけど、ウェアが『エコ』したかったら、こまめに電気を消したり、主電源を切ってくれたりしていいわよ」

「ありがとうモカ! はなちゃんは優しいモカ!」

「優しいかどうかわからないけど。こちらこそ♪ お役に立ててうれしいわ」

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「じゃぁ、さっそく電気を消すモカ」

「ちょっと、ちょっと。それじゃ何もできないじゃない」

「??? 森に電気は無いモカ。暗くても大丈夫だモカ」

「確かにあなたは大丈夫かもね。でも、人間の私は困るの」

「そうモカか……。ごめんモカ」

ウェアは申し訳なさそうに、モフンと毛を縮こませました。

「ごめんごめん。そんなつもりは無かったんだけど。そうよね。ウェアは早く『エコ』がしたいんだよね」

「モカ……」

「そうねぇ、それならちょっとお部屋の片付けしようか」

「片付けは『エコ』モカか?」

「片付け自体は違うかも知れないけど、ゴミを分けて整理するのはきっとエコよ」

「へぇ、ゴミを分けるのが『エコ』モカか! それはさっそくやっていいモカか?」

「ハイ! どうぞ♪ でも案外奥深いのよ」

はなちゃんに教えてもらってウェアは、古新聞や雑誌、空き缶、空き瓶などを片付け始めました。

「森が元気になるモカ~♪ ごほうびに近づくモカ~♪」

鼻歌交じりです。

「うん? ごほうび?」

「モカ。がんばってしずくを集めて森の木を育てたら、長老が『ごほうび』をくれるモカ」

「そうなの。それはいいわね。森も元気になるし、ごほうびももらえるし、一石二鳥ね」

「そうだモカ」

「森! 森! ごほうび! ごほうび!」

ウェアは念仏のように唱えています。

「ふふふ。モリモリごほうびが欲しいみたいね」

無邪気なウェアをみてそう微笑むと、はなちゃんもついついつられて(ウェアの故郷の森が元気になりますように)と、心の中でつぶやきました。

「終わったモカ~~」

ウェアのひたいに汗がにじみます。

「ありがとう、ウェア。キレイにしていたつもりだけど、ゴミって意外とあるものね」

初めての『エコ』が終わったので、ウェアはボトルを取り出し眺めました。何が起こるんだろう。まばたきもせずにボトルを見つめているウェアの頭越しに、はなちゃんも楽しそうにのぞき込んでいます。すると……

「ぴちょん」

どこからともなく、森のしずくがボトルの中に1滴落ちてきました。ウェアとはなちゃんは顔を見合わせました。

「あぁ!! やったモカ! これがしずくだモカ! やっぱりゴミの分別は『エコ』だったモカ。はなちゃん、ありがとモカ!」

「うん! よかったわね」

「ねぇねぇ、他にも『エコ』はあるモカか?」

「どうだろう、例えば……そこのベランダにある植物を育てるのもちょっとしたエコっていえるかもしれないし、街のゴミを拾ってキレイにするのもエコかもね。あぁ、値段が少し高いんだけど、有機野菜を買うのもそうかもしれないわ」

「やった、いろいろあるモカね。次はどの『エコ』するモカか?」

「あっ、でも、今日はもう遅いから寝ましょう。明日、私はお仕事だから、お花の水やりを一緒に手伝ってもらえるとうれしいわ」

「わかったモカ。お花を育てるのは『エコ』モカね」

「ふふ。そうだといいわね。きっと、そのステキなボトルが教えてくれるわ」

ウェアはたくさんある電化製品のコンセントを抜いてから、はなちゃんのベッドにもぐりこみました。

「あなた、なんだか懐かしいにおいがするわね」

「そうモカか?」

「うん。なんだか安心するわ。じゃぁ、おやすみなさい」

「おやすみモカ」

ふたりが眠りにつき、静まり返った部屋の中。

「ぴちょん」

しずくのたまる心地よい音が響きました。

その夜、ウェアは赤い花の咲く夢を見ました。

ひとりぼっちのエコ

はなちゃんと出会ってからウェアは、毎日『エコ』をしています。そして、しずくをもって森に帰ると自分が育てている木にあげました。そのたびに、ウェアの木はどんどん大きく育っていきました。

「ウェアや、がんばっておるようじゃのう」

枝に小鳥たちをとめた長老が、威厳の中にも優しさを含ませた声で話し掛けました。

「モカ! もう大きくなったモカ! ごほうびまだモカか?」

ウェアは、待ちきれなくて耳をパタパタさせながら聞きました。

「そうじゃのう、木に花が咲いておるじゃろ。その花びらが落ちると実ができる。そうしたらごほうびをやろう」

「そうかぁ。あと、なんしずくで実ができるモカ?」

「どれどれ。おや、ほほぉ。ウェアや、あとひとしずくでよいようじゃぞ」

「本当モカか? やった! すぐに帰って、はなちゃんと『エコ』してくるモカ!」

「そうかそうか。では、ワシはごほうびを用意するとしよう」

ウェアは全身の毛をフワフワさせながらはなちゃんの部屋に戻りました。

するとちょうどそこへはなちゃんも戻ってきました。

「お帰りモカ。待ってたモカ」

「……」

いつもなら優しく返事をしてくれるはなちゃんですが、今日は返事がありません。でも、ウェアは早く『エコ』がしたくて仕方ありません。はなちゃんのようすにかまわず、「ねぇねぇ、今日はなんの『エコ』するモカか?」と聞きました。

「あぁ、今日は『エコ』、お休みでいいんじゃないかしら」

「あとひとしずくだから『エコ』したいモカ」

「ごめん。今日はちょっと疲れているの」

「はなちゃんと一緒に『エコ』するモカ」

はなちゃんは、開きかけた唇を一度閉じようとしたのですが、言葉はあふれ出てきてしまいました……。

「もう!『エコ』『エコ』うるさいわね。私には他にやることがたくさんあるって言ってるの!」

「モカ!?」

ウェアの毛が反射的に縮こまりました。

「あなたはそれだけやってればいいかも知れないけど、私には友達と一緒に買い物に行ってお茶飲んだり、仕事で壁にぶつかったり好きな人とうまくいかなかったりとか、お花屋さんだけやってたって将来わかんないから、英会話だってやらなきゃならないの!」

はなちゃんのいつもと違うようすに戸惑いながらもウェアは、小さな声で「『エコ』で森が元気になるモカ。あとひとしずくで木が育って『ごほうび』ももらえるモカ」と、つぶやきました。

「私は『エコ』をして何かが変わったとこなんて見たこと無いし、いいことなんてなんにもない。そんなことよりも、毎日の忙しさで精一杯なの!そんなときに『エコ』なんてやって何になるっていうの!」

「今は元気がなくても、森はきっと元気になるモカ。『エコ』すればきっと」

きゅんと体を小さくしてうつむいたウェアは、さっきより小さな声で繰り返しました。

はなちゃんは、わけもなく涙がにじんでしまった目でウェアを静かに見つめました。そして、後ろを向いて「外に出てくる」とだけ言い残し、部屋を出て行きました。

その後ろ姿をただ見送ると、ひとり残された部屋でウェアは、自分に言い聞かせるように繰り返しつぶやきます。

「森は元気になるモカ。『エコ』したら元気になるモカ。長老もそう言ってたモカ。赤いお花にもきっとまた会えるモカ」

ウェアは今できることを考えました。

そして、はなちゃんのいなくなった部屋をひとりで片付け始めました。

いつの間にか細かく分別できるようになっていました。

「ウェア、それは燃えないのよ」

ウェアには、はなちゃんの優しい声が聞こえます。

「これはここだモカ」

今はもうどこに何を置けばいいかすっかり覚えていました。

「あら、上手になったわね」

ウェアには、はなちゃんの笑顔が見えます。

「森は元気になるモカ。『エコ』すればきっと元気になるモカ」

『エコ』をするときウェアはいつも呪文のように唱えます。それは、はなちゃんがいない今日も同じです。

「終わったモカ。ひとりでもできたモカ。最後のしずくがたまるモカ。あの木を見せてあげたら、はなちゃんもきっとわかってくれるモカ」

ボトルをじっと見つめたまま、音の無い時間が過ぎました。

透き通ったボトルに映るウェアの瞳の輝きが少しずつ小さくなっていきます。

「あれっ…… しずくがたまらないモカ。『ぴちょん』って言わないモカ……」

「なんでモカ? あとひとしずくで木が育つモカよ……」

小さかった不安は大きな悲しみへと姿を変えていきます。

「なんでモカ、なんでモカ……。『エコ』したのに……。もう、ゴミの分別は『エコ』じゃなくなったモカか?」

すぐにウェアは電気を消し、電化製品のコンセントも全部抜き、お花に水もあげました。

それでも、「ぴちょん」という音は聞こえません。

「森でまた、赤いお花に会いたいモカ……」

今はもう、はなちゃんの声も聞こえません……。

「はなちゃん……」

大好きなパートナーの名前を呼んだウェアは、天井を見上げ唇をきゅっと結んで、緑の森を思いながら目を閉じました。大切なボトルはぎゅっと握りしめています。

「ぴちょん」

しずくの音ではありません。

電気が消えた薄暗い部屋の中。

「ぴちょん」

「ぴちょん」

キレイに片付いた部屋の床に、ウェアの涙が静かにしみこみました。

信じること

部屋を出たはなちゃん。夕暮れどきの街を歩きながらウェアのことを考えていました。

「ひどいこと言っちゃったかな……」

「あの子は何も悪くないのに」

「友達とはけんかするし、好きな人には冷たくされるしで、私が勝手にイライラしてただけ……」

「悪いことしたな……謝らなくちゃ」

外の空気を吸って少し落ち着いたはなちゃんは、そう思うとくるりと後ろを向き、いま来た道をさっきまでより少し早足で引き返しました。

いつのまにか日もほとんど落ち、電気がついていない部屋は真っ暗です。

はなちゃんがリビングの扉を開けると、ウェアは体を小さくして眠っていました。

はなちゃんはウェアにそっと手を添え、抱え起こしました。よく見るとウェアの顔には涙の跡があります。しっかりと握りしめたボトルの中に、しずくはありません。

「あっ……はなちゃん……帰ってきてくれたモカか?」

「あたり前じゃない」

安心したウェアの目には、また涙があふれてきました。

「ゴミも分別したモカ……、お花にも水をあげたし、電気も消したモカ……はなちゃんが教えてくれた『エコ』は、全部、全部やってみたモカ……」

「そう。あなたはがんばりやさんね」

「でも、でも、しずくがたまらないモカ……。『エコ』が変わったモカか? だったら、新しい『エコ』を教えて欲しいモカ。あとひとしずくで森に最初の木が育つモカ。みんなも待ってるモカ」

「『エコ』が変わった……、新しい『エコ』……、そんなことがあるのかしら……」はなちゃんはしばらく考えました。

(『エコ』ってなんだろう…、昨日までと変わっていたもの……)

「あっ……」

はなちゃんの口元が小さく開きました。

「ねぇ、ウェア、ちょっと見せてごらん」

はなちゃんの手が、ボトルを握りしめたウェアの手を優しく包み込みました。はなちゃんの手の温もりがウェアの手に伝わります。

「ウェアの森が元気になりますように……、ウェアの森が元気になりますように……」

いつもの優しい声にウェアの顔が輝きました。その顔にはもう涙はありません。

「モカ! 森が元気になりますように……。ごほうびももらえますように……」

ふたりは心をあわせて祈りました。そうすると……

「ぴちょん」

待ち望んでいた幸せの音が部屋に響きました。心なしかいつもより大きな音に聞こえました。

「やったね、ウェア!」

「モカ! やったモカ! ついにやったモカ!」

はなちゃんはウェアをしっかりと抱きしめモコモコの毛の中に頬を埋めました。

「よかった……」

今度は、はなちゃんの目に涙があふれます。

「モカ。はなちゃんとなら『エコ』できるって信じてたモカ」

「ありがとう。信用してくれて。ウェアは『エコ』を信じられるのね」

「ただ森を元気にしたいだけだモカ」

「そっか……。『ただ、したいだけ』か……。そういうとこ、私も見習わなくちゃいけないかもね。私は何がしたいんだったっけな……」

はなちゃんは小さいころのことや、お花屋さんに勤め始めたころのことに思いを馳せました。

キボウとミライ

待望のひとしずくを集め終えたウェアがはなちゃんに言いました。

「ねぇ、はなちゃんも森に行くモカ?」

「えっ? いいの? 人間が行っても」

「別に大丈夫だモカ。長老はいつも手伝ってくれているパートナーさんを連れておいでって言ってたモカ」

「そうなんだ。じゃぁ、行ってみようかしら。ウェアがどんなごほうびをもらえるのかも見てみたいしね」

翌日。はなちゃんとウェアは森に行きました。

(なぜかこの森……みょうに懐かしいわ。前に来たことあるような気がするんだけど、いつだったかしら……)

「ねぇ、ウェア。この森の名前はなんて名前だっけ?」

「スローフォレストだモカ」

「ふ~ん。時間もゆっくり流れる感じね。」

「人間の街は忙しいモカ。もう慣れたモカけど」

「あらあら。あなた生意気言うわね~」

はなちゃんはウェアに顔を近づけ頭をなでました。

しばらく歩くとウェアの木の下に到着しました。木の枝の先には花が咲いています。

「この木を育ててたモカ」

「へぇ…」

それは、はなちゃんが今までに見たことのない木でした。ウェアの小さな体には似合わない立派な木です。

「やるじゃない、ウェア」

「へへ。はなちゃんのおかげだモカ」

「ところで、この木はなんていう名前なの?」

「『キボウの木』だモカ」ウェアが、はっきりした声で答えました。

「えっ、きぼう?……希望……」

不意に出てきた「希望」という言葉を久しく使ってなかったことに気がついて、はなちゃんは少し戸惑いました。

そんなはなちゃんのことは気にも留めずに、ウェアはいつものように最後のしずくをキボウの木にあげました。

しずくが大地に吸い込まれました。

すると気のせいでしょうか、はなちゃんは木が一瞬光ったように感じました。そして次の瞬間、花びらがヒラヒラと舞い落ちつやつやと光る『キボウの実』がなりました。

「長老がこの実を持っておいでって言ってたモカ」

そっとその実をもぎ取ったウェアは、すぐに長老のところに向かいました。

「やぁ、はなちゃんさん。ようこそ。お話はウェアから聞いておるよ」

「あっ、どうも」

ふわふわとひげを揺らす長老を前に、はなちゃんは緊張気味です。

「長老! これ持ってきたモカ」

満面の笑みでウェアはキボウの実を長老に渡しました。

「よくがんばったのう。ウェア。あきらめずにここまでやるのは、大したものじゃ」

「はなちゃんが手伝ってくれたからモカ」

「そうかそうか。はなちゃんさん。どうもありがとう。ワシからもお礼を言わせておくれ」

「いえ、そんな……。私はただちょっとだけ……」

「さて、ウェア。これが欲しいんじゃろ?」

「モカ! ごほうびモカ! いっぱいあるモカね。どれにしたらいいモカ? 迷うモカ」

目の前には色とりどりの服がピカピカと並んでいます。

「あら、今度からは裸じゃないのね?」

「そうだモカ。でも、どれがいいか選べないモカ……」

「じゃったら、はなちゃんさんに選んでもらうといい」

長老が提案しました。

「えっ、それは責任重大ね」

はなちゃんは、自分の部屋にいるウェアを思い浮かべながら選びました。

「これがいいんじゃない?」

「モカ! 着てみるモカ」

ウェアはさっそく着替えました。

「おぉ。なかなか似合うじゃないか。ウェア」

「本当? はなちゃんもそう思うモカ?」

「うん。いいじゃない。パートナーが可愛くなると、こっちまでうれしくなるわね」

「よかったのう。はなちゃんさんがセンスのよい人で」

「モカ! ごほうび、ごほうびうれしいな♪ じゃぁ、はなちゃん、帰ってまた『エコ』しようモカ!」

「えっ、さすがに今日はもういいんじゃないかしら……」

はなちゃんは苦笑いです。

「じゃぁ、長老、行ってくるモカ!」

「そうじゃ、ウェア。ちょっと待ちなさい」

ふたりが立ち去ろうとしたとき、長老が呼び止めました。

「何モカか?」

「これをはなちゃんさんにあげなさい。キボウの実の中にできる『ミライの種』じゃ」

「『ミライの種』モカか……。どうやって使うモカ?」

「この森の先にある『とあるところ』に行って、この実をすりつぶした粉を蒔くがよい。今は痩せた土地じゃが、ミライの種を蒔けば緑の大地になるはずじゃ」

「へぇ、すごい種モカ」

「あぁ、そうじゃ、忘れるところじゃった。それで、ひとつ注意があるんじゃ」

小さな声だったので、はなちゃんにはその注意はよく聞き取れませんでした。

「そういうことモカか。わかったモカ。」

「はい。はなちゃん。これお礼モカ」

ウェアはミライの種を渡しました。

「ありがとう、ウェア。ありがとうございます、長老さん」

「じゃぁ、『とあるところ』に行ってみるモカか?」

「そうね、希望の実から生まれた未来の種だもんね。何かいいことが起こりそう」

はなちゃんは、期待で顔が上気してくるのを感じました。

「きっと起こるモカ♪」

ふたりは『とあるところ』に向かって歩き始めました。

最近少し元気がないといっても、スローフォレストは多くの動植物を育む立派な森です。はなちゃんは深呼吸して、新鮮な空気を楽しみながら歩いています。

しかし、しばらく歩くとようすが変わってきました。

木がまばらになり植物の種類も減って、少し荒れているようです。

さらに先に進むと急な坂道がありました。その坂を上りきると、『とあるところ』にたどり着きました。そこは雑草だけが生えた、なんとも物悲しいところでした。

スローフォレストの暖かい雰囲気と正反対の雰囲気に、はなちゃんは少し面食らったようすです。

「こんな場所が緑でいっぱいになるのかしら……」

「はなちゃん。信じるのが大事モカよ♪」

「そう。そうだったわね」

はなちゃんは足元に転がっている石を使って、ミライの種をすりつぶしました。

「さぁ、蒔いてみましょう。ウェアもどうぞ」

半分をウェアに渡しました。

「せ~のっ!」

ミライの種をすりつぶした粉は、ふぁっと風にのり、あたりに蒔かれました。

「何が起こるのかしら?」

はなちゃんは初めての『エコ』の後、ボトルをじっと見つめていたウェアの気持ちがわかったような気がしました。そして、しばらく待ってみましたが、一向に目に見える変化はありません。

「さて、帰ろうモカ」

「えっ? 何か起こるんじゃないの。木や花の芽が出たりとか。緑の大地でしょ?」

「ひと粒だけじゃ、そんなことは起こらないモカ」

「そうなの? あぁ、それをさっき長老は、あなたに言っていたのね」

「モカ。長老が教えてくれたモカ」

「そっか。じゃぁ、いくつの種を蒔くといいの?」

「最低1000粒だモカ」

「せ、1000粒???」

「どうしたモカ?」

「だって、この1粒をもらうのに、何週間もかかったのよ。1000粒なんて言ったら、いったい私は何歳になるのよ」

はなちゃんの言っていることの意味がわからないのか、ウェアは不思議そうな顔をしています。

はなちゃんは「なんだ……」と肩を落として寂しそうです。

「はなちゃん、大丈夫だモカ」

「大丈夫って言われても……」

「きっと緑になるモカ。今、目に見えなくてもそう信じるのが大切だモカ」

そう言われるとはなちゃんは、少し間をおいて静かに2度ほどうなずいてから、「あなたが正しいわ。それに、もともとおまけでもらったようなものだし」と言いました。

「モカ。じゃぁ、お部屋に戻ってまた『エコ』手伝って欲しいモカ」

「はいはい。あなたは単純でいいわね」

「人間は頭がいいけど難しく考えすぎだモカ」

「あらあら、また生意気言われちゃったわね」

ふたりは、『とあるところ』を後にしました。

仲間

『とあるところ』にミライの種の粉を蒔いてから数週間。相変わらずウェアは『エコ』をがんばりました。「森が元気になるモカ♪」と口ずさみながら。

はなちゃんもその横で「そうだね」と微笑みます。

そして2本目の『キボウの木』も無事に育てあげ、再び長老のところに出かけました。そこで新しい服と『ミライの種』をもらいました。

「『とあるところ』に行くモカ」

「あっ、そっか。でも、う~ん、別にいかなくてもいいんじゃない。ウェアのごほうびがもらえたからそれで」

「じゃぁ、帰るモカか?」

「はなちゃんさん。あなたが考えておることはわかっておる。じゃが、ワシにだまされたと思って、もう1回だけ行ってみてはくれんかのう?」

長老が長いひげをゆらして、威厳のある静かな声で言いました。よく見ると、枝にちょこちょこと小さな花を咲かせています。

「長老はウソをつかないモカよ」

ウェアは何も疑ってないようすです。パートナーの真剣なまなざしに押されたのか、はなちゃんがうなずきました。

「じゃぁ、もう1回だけ行ってみようかしら」

そう言って歩き始めたはなちゃんですが、周りの景色が寂しくなるにつれて気持ちも落ち込み始めました。

「今日行ってもたったの2粒目……。何が起こるわけでもないわ」

小さくつぶやきました。

「何か言ったモカか?」

「ううん、なんでもないわ。さぁ、さっさと行って帰りましょう」

坂道を登って、『とあるところ』に出ました。

すると……

「あれ?」

はなちゃんは思わず足を止め、少し首をかしげ上ずった声をあげました。ウェアはそのままテクテク先に歩いていきました。

「何してるモカ。早く早くモカ」

「えっ、ええ」

はなちゃんは早歩きでウェアに追いつきました。そして、恐る恐るミライの種をすりつぶし、蒔きました。やはり目に見えた変化は起こりません。

「ねぇ、ウェア」

「何モカか?」

「あなた、ここにお花が咲いたりするには1000粒は必要だって言ってたわよね。長老に聞いたって」

「モカ」

「じゃぁ、なんで、ほんの少しだけだけど、ここに花が咲いたり木の芽が出たりしているの?」

今回もウェアは不思議そうな顔をしています。でも、はなちゃんからしてみればウェアがそんな顔をすることが不思議です。

「どういうことなんだろ? 1粒でも時間がたつと芽が出るってことかしら……」

はなちゃんは、またつぶやきました。

「そういうことモカね」

ウェアは意味ありげにつぶやきました。

「何を言っているモカ? そんなの簡単だモカ。はなちゃんはひとりじゃないってことモカ」

「えっ? ひとりじゃないって……私とウェアだけでしょ?」

するとそのとき、ふたりの後ろから話し声が聞こえてきました。

「ねぇねぇ、次のごほうびは何にするプキ?」

「あんたねぇ、森の木を育てたいの? ごほうびが欲しいの、どっちなの?」

「う~ん、どっちもプキ!」

どこかで聞いたような会話です。

さらにその後ろからも、ざわざわと足音や話し声が聞こえます。

「あぁ、そういうことか……。他にもいたんだ……『エコ』している人が」

歩いてくるペンギンと女の人の姿がウェアと自分に重なります。

「はなちゃんが勝手にひとりだと思ってただけモカ」

そう言うとウェアは、しずくを集めて森に戻っては森の未来やパートナーの話題でいつも盛り上がっていた仲間の一匹に声を掛けました。

「お~い。こっちだモカ」

「おぉ、ウェアプキか。もうふたつ目のごほうびをもらったプキな。長老から聞いたプキ~」

「へへっ、そうだモカ。これからまた、はなちゃんと『エコ』するモカ」

「じゃぁ、こっちは『あきこさん』と一緒にするプキ」

動物たちが互いに真新しい服を見せびらかしあっているそばで、はなちゃんは『あきこさん』と呼ばれている女の人と目が合いました。

「あっ、はじめまして。『あきこさん』ですか?」

「えぇ、そうよ。こちらこそはじめまして。あなたの名前は『はなちゃん』でいいのかしら?」

「あっ、それは……。私がたまたまお花屋さんに勤めていて、そこで出会ったから、『じゃぁ、はなちゃんで』ってことにしたんです。まさか、この子とこんなに長く一緒にいるとも思ってなかったから、あだなでいいかなって思っていたらすっかりなじんじゃって、つい、そのまま……」

「あら、そうなんだ。まぁ、いいんじゃない。この子達が縁でみんなが知り合えればね。

それであなたの本当の名前はなんていうの?」

仲間との会話を終えたウェアも、はなちゃんの本当の名前に興味津々です。はなちゃんの口元をじっと見つめています。

「ウェア。私の名前はね……」

さて、はなちゃんとウェアの物語はここで終わりです。はなちゃんやあきこさんをはじめとする人間と、パートナーの動物たちの協力によって、きっと、この『とあるところ』には数多くの草花が芽吹き、やがて緑豊かな場所に変わっていくことでしょう。

最後に

はなちゃんとウェアの物語は、はなちゃんが本当の名前を教えるところで終わりました。この物語の主人公のひとりであるはなちゃんは、特別な人ではなく普通の人です。だから、はなちゃんの本当の名前、それはひょっとしたら、ここまでこの物語を読んでくれた『あなたの名前』だったとしても、不思議はないんじゃないでしょうか?

『とあるところ』は、みんなの心の中にあります。

『エコ』をしても、なかなか目に見える変化はないでしょう。でも、目に見えないものでも信じることが大切なのだと思います。夢を持ち、キボウを育て、ミライを信じること。人と人、人と動物、人と自然のつながりを信じること。

『エコ』は、そのことの大切さに気づくための合言葉と考えてみてはどうでしょう?

きっと、まず最初に変えるべきは、周りの環境ではなく私達自身の方です。

そう思えるようになると、あなたの中の『とあるところ』に変化が出始めます。

あなたの中にも「きっとうまく行く。いいことが起こる」、そう信じて『夢のボトル』を握りしめ続けたウェアが、今もいるはずです。

さぁ、今すぐ、あなたの中のパートナーに会いに出かけてみませんか。

あなたの『夢のボトル』から、新しくも懐かしいキボウとミライが生まれますように。

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