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ひとりぼっちのエコ

はなちゃんと出会ってからウェアは、毎日『エコ』をしています。そして、しずくをもって森に帰ると自分が育てている木にあげました。そのたびに、ウェアの木はどんどん大きく育っていきました。

「ウェアや、がんばっておるようじゃのう」

枝に小鳥たちをとめた長老が、威厳の中にも優しさを含ませた声で話し掛けました。

「モカ! もう大きくなったモカ! ごほうびまだモカか?」

ウェアは、待ちきれなくて耳をパタパタさせながら聞きました。

「そうじゃのう、木に花が咲いておるじゃろ。その花びらが落ちると実ができる。そうしたらごほうびをやろう」

「そうかぁ。あと、なんしずくで実ができるモカ?」

「どれどれ。おや、ほほぉ。ウェアや、あとひとしずくでよいようじゃぞ」

「本当モカか? やった! すぐに帰って、はなちゃんと『エコ』してくるモカ!」

「そうかそうか。では、ワシはごほうびを用意するとしよう」

ウェアは全身の毛をフワフワさせながらはなちゃんの部屋に戻りました。

するとちょうどそこへはなちゃんも戻ってきました。

「お帰りモカ。待ってたモカ」

「……」

いつもなら優しく返事をしてくれるはなちゃんですが、今日は返事がありません。でも、ウェアは早く『エコ』がしたくて仕方ありません。はなちゃんのようすにかまわず、「ねぇねぇ、今日はなんの『エコ』するモカか?」と聞きました。

「あぁ、今日は『エコ』、お休みでいいんじゃないかしら」

「あとひとしずくだから『エコ』したいモカ」

「ごめん。今日はちょっと疲れているの」

「はなちゃんと一緒に『エコ』するモカ」

はなちゃんは、開きかけた唇を一度閉じようとしたのですが、言葉はあふれ出てきてしまいました……。

「もう!『エコ』『エコ』うるさいわね。私には他にやることがたくさんあるって言ってるの!」

「モカ!?」

ウェアの毛が反射的に縮こまりました。

「あなたはそれだけやってればいいかも知れないけど、私には友達と一緒に買い物に行ってお茶飲んだり、仕事で壁にぶつかったり好きな人とうまくいかなかったりとか、お花屋さんだけやってたって将来わかんないから、英会話だってやらなきゃならないの!」

はなちゃんのいつもと違うようすに戸惑いながらもウェアは、小さな声で「『エコ』で森が元気になるモカ。あとひとしずくで木が育って『ごほうび』ももらえるモカ」と、つぶやきました。

「私は『エコ』をして何かが変わったとこなんて見たこと無いし、いいことなんてなんにもない。そんなことよりも、毎日の忙しさで精一杯なの!そんなときに『エコ』なんてやって何になるっていうの!」

「今は元気がなくても、森はきっと元気になるモカ。『エコ』すればきっと」

きゅんと体を小さくしてうつむいたウェアは、さっきより小さな声で繰り返しました。

はなちゃんは、わけもなく涙がにじんでしまった目でウェアを静かに見つめました。そして、後ろを向いて「外に出てくる」とだけ言い残し、部屋を出て行きました。

その後ろ姿をただ見送ると、ひとり残された部屋でウェアは、自分に言い聞かせるように繰り返しつぶやきます。

「森は元気になるモカ。『エコ』したら元気になるモカ。長老もそう言ってたモカ。赤いお花にもきっとまた会えるモカ」

ウェアは今できることを考えました。

そして、はなちゃんのいなくなった部屋をひとりで片付け始めました。

いつの間にか細かく分別できるようになっていました。

「ウェア、それは燃えないのよ」

ウェアには、はなちゃんの優しい声が聞こえます。

「これはここだモカ」

今はもうどこに何を置けばいいかすっかり覚えていました。

「あら、上手になったわね」

ウェアには、はなちゃんの笑顔が見えます。

「森は元気になるモカ。『エコ』すればきっと元気になるモカ」

『エコ』をするときウェアはいつも呪文のように唱えます。それは、はなちゃんがいない今日も同じです。

「終わったモカ。ひとりでもできたモカ。最後のしずくがたまるモカ。あの木を見せてあげたら、はなちゃんもきっとわかってくれるモカ」

ボトルをじっと見つめたまま、音の無い時間が過ぎました。

透き通ったボトルに映るウェアの瞳の輝きが少しずつ小さくなっていきます。

「あれっ…… しずくがたまらないモカ。『ぴちょん』って言わないモカ……」

「なんでモカ? あとひとしずくで木が育つモカよ……」

小さかった不安は大きな悲しみへと姿を変えていきます。

「なんでモカ、なんでモカ……。『エコ』したのに……。もう、ゴミの分別は『エコ』じゃなくなったモカか?」

すぐにウェアは電気を消し、電化製品のコンセントも全部抜き、お花に水もあげました。

それでも、「ぴちょん」という音は聞こえません。

「森でまた、赤いお花に会いたいモカ……」

今はもう、はなちゃんの声も聞こえません……。

「はなちゃん……」

大好きなパートナーの名前を呼んだウェアは、天井を見上げ唇をきゅっと結んで、緑の森を思いながら目を閉じました。大切なボトルはぎゅっと握りしめています。

「ぴちょん」

しずくの音ではありません。

電気が消えた薄暗い部屋の中。

「ぴちょん」

「ぴちょん」

キレイに片付いた部屋の床に、ウェアの涙が静かにしみこみました。

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コメント

ヾ(*′○`)゚.+:。゚☆こんばんわぁ~☆
そうですね、エコに取り組むということは面倒な部分も沢山ありますね。
ゴミの分別なども、同じ入れ物に全て一緒に入れてしまえば楽ですものね。
なかなか分かってもらえない人がいます、というより分からない人のほうが多いのでしょうね。
面倒なことは大事なこと、面倒なことをしないということは大事なことをしないということですね。
楽に何でもできるように、便利になってしまいましたものね。急に我慢をしなさいといってもできないようになっているのでしょうね。

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