仲間
『とあるところ』にミライの種の粉を蒔いてから数週間。相変わらずウェアは『エコ』をがんばりました。「森が元気になるモカ♪」と口ずさみながら。
はなちゃんもその横で「そうだね」と微笑みます。
そして2本目の『キボウの木』も無事に育てあげ、再び長老のところに出かけました。そこで新しい服と『ミライの種』をもらいました。
「『とあるところ』に行くモカ」
「あっ、そっか。でも、う~ん、別にいかなくてもいいんじゃない。ウェアのごほうびがもらえたからそれで」
「じゃぁ、帰るモカか?」
「はなちゃんさん。あなたが考えておることはわかっておる。じゃが、ワシにだまされたと思って、もう1回だけ行ってみてはくれんかのう?」
長老が長いひげをゆらして、威厳のある静かな声で言いました。よく見ると、枝にちょこちょこと小さな花を咲かせています。
「長老はウソをつかないモカよ」
ウェアは何も疑ってないようすです。パートナーの真剣なまなざしに押されたのか、はなちゃんがうなずきました。
「じゃぁ、もう1回だけ行ってみようかしら」
そう言って歩き始めたはなちゃんですが、周りの景色が寂しくなるにつれて気持ちも落ち込み始めました。
「今日行ってもたったの2粒目……。何が起こるわけでもないわ」
小さくつぶやきました。
「何か言ったモカか?」
「ううん、なんでもないわ。さぁ、さっさと行って帰りましょう」
坂道を登って、『とあるところ』に出ました。
すると……
「あれ?」
はなちゃんは思わず足を止め、少し首をかしげ上ずった声をあげました。ウェアはそのままテクテク先に歩いていきました。
「何してるモカ。早く早くモカ」
「えっ、ええ」
はなちゃんは早歩きでウェアに追いつきました。そして、恐る恐るミライの種をすりつぶし、蒔きました。やはり目に見えた変化は起こりません。
「ねぇ、ウェア」
「何モカか?」
「あなた、ここにお花が咲いたりするには1000粒は必要だって言ってたわよね。長老に聞いたって」
「モカ」
「じゃぁ、なんで、ほんの少しだけだけど、ここに花が咲いたり木の芽が出たりしているの?」
今回もウェアは不思議そうな顔をしています。でも、はなちゃんからしてみればウェアがそんな顔をすることが不思議です。
「どういうことなんだろ? 1粒でも時間がたつと芽が出るってことかしら……」
はなちゃんは、またつぶやきました。
「そういうことモカね」
ウェアは意味ありげにつぶやきました。
「何を言っているモカ? そんなの簡単だモカ。はなちゃんはひとりじゃないってことモカ」
「えっ? ひとりじゃないって……私とウェアだけでしょ?」
するとそのとき、ふたりの後ろから話し声が聞こえてきました。
「ねぇねぇ、次のごほうびは何にするプキ?」
「あんたねぇ、森の木を育てたいの? ごほうびが欲しいの、どっちなの?」
「う~ん、どっちもプキ!」
どこかで聞いたような会話です。
さらにその後ろからも、ざわざわと足音や話し声が聞こえます。
「あぁ、そういうことか……。他にもいたんだ……『エコ』している人が」
歩いてくるペンギンと女の人の姿がウェアと自分に重なります。
「はなちゃんが勝手にひとりだと思ってただけモカ」
そう言うとウェアは、しずくを集めて森に戻っては森の未来やパートナーの話題でいつも盛り上がっていた仲間の一匹に声を掛けました。
「お~い。こっちだモカ」
「おぉ、ウェアプキか。もうふたつ目のごほうびをもらったプキな。長老から聞いたプキ~」
「へへっ、そうだモカ。これからまた、はなちゃんと『エコ』するモカ」
「じゃぁ、こっちは『あきこさん』と一緒にするプキ」
動物たちが互いに真新しい服を見せびらかしあっているそばで、はなちゃんは『あきこさん』と呼ばれている女の人と目が合いました。
「あっ、はじめまして。『あきこさん』ですか?」
「えぇ、そうよ。こちらこそはじめまして。あなたの名前は『はなちゃん』でいいのかしら?」
「あっ、それは……。私がたまたまお花屋さんに勤めていて、そこで出会ったから、『じゃぁ、はなちゃんで』ってことにしたんです。まさか、この子とこんなに長く一緒にいるとも思ってなかったから、あだなでいいかなって思っていたらすっかりなじんじゃって、つい、そのまま……」
「あら、そうなんだ。まぁ、いいんじゃない。この子達が縁でみんなが知り合えればね。
それであなたの本当の名前はなんていうの?」
仲間との会話を終えたウェアも、はなちゃんの本当の名前に興味津々です。はなちゃんの口元をじっと見つめています。
「ウェア。私の名前はね……」
さて、はなちゃんとウェアの物語はここで終わりです。はなちゃんやあきこさんをはじめとする人間と、パートナーの動物たちの協力によって、きっと、この『とあるところ』には数多くの草花が芽吹き、やがて緑豊かな場所に変わっていくことでしょう。


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